とてもワクワクさせてくれる本でした。

それはまるで、子供の頃、ワクワクしながら無我夢中で読みふけったあの頃を思い出させてくれるような─。

あらすじ

失業中だった青年クレイは、通りを歩いている時、ふと窓に貼られた求人ビラを目にする。

求人ビラにはこう書かれていた。

店員募集
夜勤
特殊な応募条件あり
諸手当厚遇

店の名前は゛二十四時間書店゛。

クレイは書店のガラス戸を開けて、店の中に入った。

出迎えたのは不思議な魅力を持つ、ヒョロリとした老人だった。

老人は言った。

「何かお探しかな?」

クレイは答えた。

「仕事を探してるんですが」─。

こうして、クレイはこの二十四時間書店で働き始めることになる。

この書店は一風、いやかなり変わっていた。

書店の奥の方の棚にはぎっしりと本が詰まっており、なんとその本はどれもインターネットで検索をかけてもヒットしない、どこから手に入れたのかもわからない謎めいた本だった。
しかも、店員はその本の中身を絶対に見てはいけないと言われている。

それに加えて、その本を定期的に借りにくる、奇妙な人々が存在するのだ。

彼らは、全員かなり変わっていて、どこか別の時代から来たような雰囲気があった。

その奇妙な本には一体何が書かれているのか。なぜ中身を見てはいけないのか。
そして、定期的に借りに来る奇妙な人々の目的とは…。

スリル、謎解き、そして興奮に満ちた大冒険が始まる─。

感想&見どころ

いろんなエンタメ要素が詰まっていて最高にワクワクする

冒頭で「とてもワクワクさせてくれる本」と書きましたが、いろんなエンタメがぎっしりと詰まっている本でした。

要素を書き並べてみると、
本、ミステリー、スパイ、コンピュータ、歴史、そして、恋、友情…etc.

これらの要素が魅力的なキャラクター達と一緒に展開されるのですから、とてもワクワクして楽しかったです。

主人公とペナンブラ氏の友情

そして、なんといっても本作を語る上で外せないのが、主人公の青年クレイと、二十四時間書店の店主である老人ペナンブラ氏との友情でしょう。

この二人の友情というか、お互いを信頼し合っている感じがとても好きです。

クレイがピンチにおちいったペナンブラ氏を救おうと奮闘するシーンはとても熱かったですね。

印象に残った言葉

本作を読んでいて、印象に残っている言葉があります。それは、プログラミングに関する描写です。
以下に引用しておきます。

プログラミングは全部が全部同じじゃない。ふつうの書き言葉にだって異なるリズムやイディオムがあるだろう? プログラミング言語もなんだ。C言語と呼ばれるやつは、乱暴な命令調でほとんど味もそっけない。Lispっていうプログラミング言語は、従属節がいっぱいくっついてぐるぐる輪を描くように長くなる。あんまり長いんで、そもそもなんのコードだったか忘れてしまうくらいだ。Erlangてプログラミング言語は音のとおり。スカンジナビア生まれでエキセントリック。いま挙げたプログラミング言語のなかにぼくが使えるものはない。みんなむずかしすぎるから。
 でも、〈ニューベーグル〉時代から使ってるRubyは開発者が陽気な日本人プログラマで、親しみやすくて理解可能な詩みたいに読める。

引用:ロビン・スローン『ペナンブラ氏の24時間書店』(創元推理文庫)p79

プログラミング言語にも、文章と同じように、それぞれ個性があるという話は興味深いです。
命令調でそっけなかったり、エキセントリックだったり…etc.

さらに続きを引用してみます。

 とはいえ、もちろん、プログラミング言語の重要な点は読むだけじゃなく、書くためにも使うことだ。こっちの思うとおりに仕事をしてもらわなきゃならない。この点において、ルビーは輝きを放つんだよ。
 料理をしているところを思い浮かべてみてくれ。レシピにきちんきちんと従うんじゃなく、食材を思うがままに足し引きできるとする。塩を加え、味見をし、気に入らなかったら、また塩を取りのけられるんだ。非の打ちどころなくカリッと焼けたパンの皮を取って脇によけておき、なかに好きなものを入れたりもできる。成功かいらいらする失敗(僕の場合はこっちがほとんどだけど)へと進む直線的なプロセスとはもう違う。堂々めぐりをしたり、渦を巻いたり、チャチャッと走り書きをしたり。遊べるんだ。

引用:ロビン・スローン『ペナンブラ氏の24時間書店』(創元推理文庫)p79〜80

2番目の引用では、Rubyというプログラミング言語の特徴について、詳しく述べられています。
門外漢の筆者でもRubyを使ってみたい!と思わせるくらいに、Rubyの魅力がたっぷりと詰まっている描写でとても好きです。

おわりに

面白い本に出会えたときは、とてもワクワクするし、とても楽しい気分になれる。これだから読書はやめられない─。

今回の記事を書くにあたり、本作を少し読み直してましたが、もう一度読んでもやはり面白い!と思いました。

おすすめです。

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