ミステリーを読みながら、恋愛小説も楽しめるという、面白い作品でした。
目次
シリーズの順番
本題に入る前に、
偽恋愛小説家シリーズの読む順番を書いておきます。
以下の順番で読めば大丈夫です。(全3巻で完結)
①『偽恋愛小説家』(発売日:2014/06)
②『俗・偽恋愛小説家』(発売日:2016/08)
③『偽恋愛小説家、最後の嘘』(発売日:2021/10)
あらすじ
新人編集者の井上月子は、恋愛小説家の夢宮宇多(ゆめみや うた)の担当をすることになる。
しかし、夢宮宇多のデビュー作の盗作疑惑が浮上する。
しかも、夢宮宇多は殺人犯だった…?
まさか…!そんなはずは…。月子は、疑惑を晴らすべく、真相究明に乗り出すが…。
見どころ&感想
物語全体を通して仕掛けられたトリック
もう、しょっぱなから全力で読者を騙しに来てます。
筆者はすっかり騙されてしまいましたw
ただ、本作は本格ミステリというよりかは、どちらかというと気軽に読めるライトな感じのミステリです。
重たいのはちょっと…という方や、少し疲れている時なんかでも気楽に楽しめるのでおすすめです。
毎話ごとに童話がモチーフとなっている
本作の魅力は、なんといっても毎話ごとに繰り広げられる童話解釈と、その解釈をもとに事件が解決されることにあります。
第1巻で登場する童話を並べてみると、以下になります。
・シンデレラ
・眠り姫
・人魚姫
・美女と野獣
こういった童話の良い点は、多くの人が、なんとなくあらすじは知っているけれど、詳しくは知らないという絶妙なラインを突いているという点です。
毎回、夢センセによって、文学の講義を受けているようで、童話の書かれた時代背景や、それに基づいた物語の解釈は、門外漢の筆者にとって新鮮で面白かったです。
童話の解釈に興味が湧いてきました。
※夢センセとは、夢宮宇多の呼び名です。
ただ、唯一、欠点をあげるとすれば、童話になぞらえた事件が重視されるあまり、事件の犯人の動機の部分がチープになってしまうところがある点です。
そんな簡単に、事件を起こしたいとおもうかな普通…?という感じで。
まあ、筆者は犯罪心理学の専門家でもなんでもないので、あくまで素人の意見ですが。
恋愛について考えさせられる
本作は、タイトルに『偽恋愛小説家』とあるとおり、謎解きだけでなく、恋愛要素も多く含んでいます。
その中で恋愛について、考えさせられるセリフや描写がいくつかありました。
実際に一部を引用してみます。
「感傷と恋は似ているけんが、違うもんだで。そこをはき違えると──人魚になるに」
「……どういうことですか?」
「感傷と恋。わかるら? 人魚姫は陸の世界に憧れた。王子は陸のシンボル。中身なんて何でもよかったずら」
引用:森晶麿『偽恋愛小説家』(朝日新聞出版)p171〜p172
ちなみに感傷とは、「ものごとに心を動かされること」といった意味があります。
この「感傷と恋は違う」の他にも「憧れと恋は違うものなのか?」や恋愛における「好き」とは何か?などの描写があり、恋愛経験に乏しい筆者としては、なるほどと思ったり、考えさせられることが多々あり、勉強になりました。
おわりに
今回紹介した『偽恋愛小説家』シリーズの作者である森晶麿さんの作品を読むのは、今回が初めてでした。
面白かったので、他の作品も読んでみたいです。