※ネタバレ注意

<時と四季シリーズ>第三弾、八目迷『琥珀の秋、0秒の旅』を読み終えたので、感想とあらすじを書いていきます。

ちなみに、<時と四季シリーズ>の第1弾が『夏へのトンネル、さよならの出口』、第2弾が『きのうの春で、君を待つ』になります。

夏、春と来て、今回は秋が舞台です。

あらすじ

修学旅行

主人公の名前は、麦野(むぎの)カヤトといい、

普段は東京の学校に通っています。

現在は、北海道の函館(はこだて)に修学旅行に来ています。

ですが、主人公は早くも帰りたい…。と思っていました。

それにはわけがありました。

主人公は、とある病気が原因で、不登校ぎみで、それに加えて、人と話すのは、得意ではありません。

修学旅行ということで、班行動をしているのですが、主人公以外の班員は、全員、昼休みに一緒にご飯を食べるくらい、仲のいいグループでした。

そんなわけで、主人公はいたたまれずに早くも帰りたいと思っていたのです。

班員の1人に、永井くんという主人公に気さくに話しかけてくれる人物がいました。

しかし、主人公は永井くんを突き飛ばしてしまいます(これには深い事情があるのですが…)。


そのとき。

僕は永井くんを両手で突き飛ばした。

地面に尻餅をつく永井くん。

凍りつく空気。

引用:八目迷『琥珀の秋、0秒の旅』(ガガガ文庫)p14

時が止まる

永井くんを突き飛ばしてしまった後悔にさいなまれる主人公。

次の瞬間、

音が消えた


自分の出した声の大きさに驚いた。

……違う。声が大きかったんじゃない。

辺りが静かすぎるんだ。

引用:八目迷『琥珀の秋、0秒の旅』(ガガガ文庫)p18

信じられないことに、自分以外の時間がすべて止まってしまった。

永井くんも、もちろん他の通行人も__。

そのとき、遠くから声が聞こえました。

おじさんの家をめざす

ここで、本作品のもう1人のメイン人物にして、ヒロインでもある、井熊(いぐま)さんが登場します。

主人公と井熊さんは、この「時間停止現象」の謎を究明すべく、東京を目指すことに。

なぜ?東京なのかというと、

どうやら、主人公のおじさんである暮彦おじさんが、この「時間停止現象」の秘密を解く鍵になりそうだったからです。おじさんの家は東京にあります。

主人公と井熊さんの旅が始まります。

感想

面白いと思った点は以下です。
・主人公に感情移入しやすい
・なにげに暮彦おじさんがいいキャラしてて好き
・前作とのつながりでテンション上がった

順番に見ていきます。

主人公に感情移入しやすい

筆者も学校時代、主人公と同じように人と話すのは苦手で、あまり修学旅行や文化祭などの学校行事にはいい思い出がない、いわゆる陰(いん)の方のタイプだったので、

序盤あたりの描写から、主人公に感情移入しまくってました。

班決めで、余ってしまうというのもそうですが、特に以下の描写が共感できました。

「麦野くんは行ってみたいとこある?」

「あ、いや、特には」

「そか」

短い返事。

途端に申し訳ない気持ちになってきた。別に行きたくなくても、どこか適当な観光地を挙げたほうがよかったかもしれない。せっかく話を振ってくれたのだ。場を盛り上げる努力をするべきだった。

引用:八目迷『琥珀の秋、0秒の旅』(ガガガ文庫)p11

この、せっかく話を振ってくれたのに、話を広げられず、そこで会話が終了してしまうやつ…。めっちゃあるあるなんですよ…w。

あれはきついっすね…。

なにげに暮彦おじさんがいいキャラしてて好き

本作品で1番印象に残ったキャラクターを1人選べと言われたら、間違いなく暮彦おじさんをあげると思います。

それくらい、自分の中では印象に残ったキャラでした。

この暮彦おじさんなんですが、名言も言っていて、個人的には以下のシーンがお気に入りです。

「弱者の共感では、強者の正論に勝つことはできない。……けどな、カヤト」

駅に着く。

僕たちは足を止めて向かい合った。

「強くならなきゃ生きていけないなら、それはこの世界が間違ってる。俺は弱虫かもしれないが、間違ってはいないぞ」

引用:八目迷『琥珀の秋、0秒の旅』(ガガガ文庫)p203

この暮彦おじさんという人物は、偏屈な性格で、いつも悪態をついていて親戚から疎まれているのですが、

主人公のことは、気に入っている(表立ってはそういう素振りを見せないが)というか、主人公には心をゆるしているという素振りが感じられて、

いつも悪態ばかりついているのですが、それとなく見せる主人公にたいする優しさが垣間見えて、いいキャラだなと思いました。

前作とのつながりでテンション上がった

前作とのつながりといっても、話自体はそれぞれ完結しているので、どこから読んでも大丈夫ではあるのですが、

最後の方にさらっと、
『夏へのトンネル、さよならの出口』と『きのうの春で、君を待つ』とのつながりを示唆する描写がでてきて、うおお!っと個人的にテンションが上がりました。

こういうの好きです。

おわりに

今回が、<時と四季シリーズ>第三弾で、これまでで夏、春、秋、ときたので次回は冬編が出るのでしょうか?わかりませんが、楽しみです。

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