アイザック・アシモフ『夜明けのロボット』のネタバレ感想とあらすじを書いていきます。
本作は、私服刑事イライジャ・ベイリとヒューマンフォーム・ロボット(人間と見分けがつかない程、精巧なロボット)のダニール・オリヴァーのコンビが活躍するシリーズの第3弾です。
時系列順に並べると、
『鋼鉄都市』、『はだかの太陽』、『夜明けのロボット』になります。
この『夜明けのロボット』だけがなぜか絶版になってしまっています。
目次
あらすじ
ベイリ呼び出される
作中の時間の流れは前作の『はだかの太陽』から2年後です。
ロボット「マスター・ベイリ、市警本部の呼び出しです」
ベイリ「なんてこった!」
ベイリ、今回の任務を告げられる
担当官「オーロラへ行って、ファストルフ博士を窮地から救ってほしい」
ベイリ「えぇ、そんな突然困りますよ」
担当官「あなたに選択の余地はないわ」
ベイリ「なんてこった!」
そしてベイリはしぶしぶ宇宙船に乗って、惑星オーロラへ向かうことに。
旧友との再開
担当官から今回の事件のあらましを聞いたベイリは、『鋼鉄都市』や『はだかの太陽』の事件ではなんとか上手くやってのけたが、今度こそは本当に解決は絶望的だと悟ります。
そして、気落ちした状態で宇宙船に乗り込みました。
しかし、宇宙船にはかつて難事件をともに解決した相棒、ヒューマンフォーム・ロボットのダニールが待っていたのです。
ベイリ「ダニール!」
ベイリは感激のあまり、ダニールに抱きつきます。
ファストルフ博士との再開
無事オーロラへ着いたベイリは、ファストルフ博士と3年ぶりに再開します。
そして、ファストルフ博士と食事をしながら、今回の事件についての詳しい話を聞くことに。
しかし…。
ファストルフ博士から話を聞けば聞くほど、今回の事件の解決はますます絶望的であると知ります。
ベイリ、ついに切れる
ベイリ「博士、あなたは僕を挫折させてたのしんでいるらしい」
博士「いやいや、私は問題をあるがままに示しているにすぎない」
史上最強の敵アマディロ
アマディロはくっくっと笑いだした。顔に笑い皺ができた。「あなたの言うことはあらゆる点で正しいと思いますよ、ミスタ・ベイリ。しかし…」
引用:アイザック・アシモフ『夜明けのロボット 下』(ハヤカワ文庫)p157
幾度の失敗を重ね、苦戦を強いられていたベイリはとうとう事件のしっぽをつかみます。
そして、ロボット工学研究所の所長であるアマディロ博士に話を聞くことになるのですが…。
アマディロはがっしりとした体躯に、黒いちぢれた髪の毛、そして浅黒い肌に微笑を浮かべた大男でした。
ベイリはアマディロについて事前に聞いていた印象とのギャップに驚き呆気にとられます。
話してみると、アマディロはとても頭の切れる人物でベイリは追い詰められてしまいます。
ベイリ、罠にかかる
アマディロから話を聞いた帰り道。
ベイリ達の乗っている乗り物に異常が発生。
突然、乗り物がガタガタを揺れだします。
ジスカルド「正常に作動しません。どうやら何者かにより故意に損傷を与えられたようです。しかも少し前からわれわれの後をつけてくるものがいます」
ジスカルドとは今回ベイリの護衛を努めるために新たに加わったロボットです。
ジスカルドは普段はファストルフ博士の右腕を努めている優秀なロボットです。
乗り物にはベイリとジスカルド、そしてダニールの3人が乗っていました。
ベイリは懸命に思考を働かせ、たくらみに気づきます。
ベイリ「ダニール!君の命が危ない!逃げるんだ!」
ダニール「それは不可能です。ご気分の悪いあなたを置いていくことはできません」
ベイリ「ダニールお願いだ!逃げてくれ!」
ダニールぅぅぅぅぅ!!!!
ダニールの命運はいかに。
そしてベイリは無事事件を解決することができるのか。
感想
面白いと思った点は以下です。
・グイグイ読ませる
・ヒロインのグレディアが良い味を出している
・絶望、そして熱い展開
・伏線回収が見事
順番に見ていきます。
グイグイ読ませる
本作を寝る前に読むと読むのが止まらなくなってしまい、ついつい寝る時間が遅くなってしまうのには困りました(良い意味で)。
筆者は文庫版で読んだので、上巻と下巻に別れているのですが、上巻の半分ぐらいまでは、正直それほどでもなかったのですが、途中からジェットコースター的に面白くなり、ついつい読みふけってしまう面白さがありました。
ヒロインのグレディアが良い味を出している
おそらくすでに読んだことあるよという方は、グレディアが印象に残っているという方が多いのではないでしょうか。
つくづくグレディアは魅力的なヒロインだなぁと思います。
本作でベイリとグレディアが直接合うのは本当に最後になってしまうのですが、別れの時のシーンがエモくて印象に残っています。
彼はくちびるを動かした。さよなら。声は出なかったので____どうしても声に出しては言えなかったのだ____彼はこうつけくわえた。いとしいひと。
彼女のくちびるも動いた。
引用:アイザック・アシモフ『夜明けのロボット 下』(ハヤカワ文庫)p320
さよなら、最愛のひと。
絶望、そして熱い展開
『鋼鉄都市』と『はだかの太陽』を読んでから本作を読んだのですが、今回は特にうわぁ…これはもう無理でしょ…終わったなといった絶望感を味わってからの逆転劇がすごくて、面白かったです。
ダニールがピンチに陥って、ベイリが必死に救おうとするという、熱い展開もありました。
伏線回収が見事
本作はとても考えられた構成をしているなと思ったのが、ほんとうの最後のページ(全339Pなら339Pまで)まで謎が残っていて、最後まで読ませるという点です。
事件の謎解きが終わったら、あとはエピローグとして、その後の、後日談的なのが描かれるという流れはよくありますが、メインの謎解きが終わった後も、まだ謎が残っていて、最後のページまで展開が気になるという作品に出会ったのは本作が初めてで、すごいなと思いました。
最後まで目が離せない作品でした。
おわりに
『夜明けのロボット』のさらなる続編は『ロボットの帝国』で、ダニールやジスカルド、グレディアも登場するらしいので読んでみたいです。
追記
『はだかの太陽』と『夜明けのロボット』の間の話が『ミラー・イメージ』という短編で読めるという情報をキャッチ!
『SFミステリ傑作選 1980年(もしくは風見潤編)』に収録されているらしいです。
値段をAmazonで見てみたらどっちとも、定価よりお高い…。どうしようか。
鋼鉄都市シリーズも含めたロボットシリーズを読む順番については以下の記事に詳しく書いたので興味のある方はどうぞ。