ストーリーの完成度高ぇ…。
というのが読み終わった率直な感想である。
大学の〈超常現象研究会〉という、いわゆるオカルトサークルが舞台の物語であるとはいえ、あくまで舞台は現実世界の話なので、本作の冒頭にしょっぱなから登場した、非現実的・非科学的な要素をどう収束させるのか?と思いがら読み進めていた。
結論を書くと、最後まで読んでみて、その収束のさせ方が見事で読後感もとても良くて、
とにかくすごい良かった。
まだ未読の方がもしいたら、是非あらすじなどを一切見ずに、先入観無しで読んでみてほしい。そんな作品。
ここからはネタバレに配慮しつつ本作の魅力について語ってみたい。
目次
見どころ&感想
キャラがしっかり立っている
物語を楽しめるかどうかは、そこに登場するキャラクターをいかに好きになれるかが、かなり重要なウェイトを占めると筆者は思っているのだが、その点、本作は素晴らしい。
主人公は漫才でいうツッコミ役というか、いわゆる読者の代弁者的ポジションで、まあ言ってしまえば普通の男の子ということになるのだけど、それだけではなく活躍するときはしっかりと活躍するというちゃんと主人公している主人公なのである。
そんな主人公から想像が付くかもしれないが、他のメインとなる登場人物はほぼ例外なく、全員が俗に言う「変人」である。
〈超常現象研究会〉というオカルトサークルに所属しているだけあって、かな〜り濃いメンバーが集まっているのである。
一人ずつ紹介していこう。
まず1人目は、〈超常現象研究会〉の代表を務める通称「会長」こと天川(てんかわ)さんだ。彼は未確認飛行物体UFOとそれに伴う宇宙人を見つけることに全身全霊をかたむけているのだが、その徹底ぶりは外を出歩く時はかかさず後方の空にUFOが表れたときに見逃さないため、背中にカメラを取り付けその映像をドラゴンボールのフリーザが片目に装着しているような(いわゆるスカウター的な)機械を左目に装着してモニターしているということからもよくわかる。その様子は大学内でも噂になっているほどで、かなり筋金入りの男だ。
2人目は紹介するのは、月宮さんだ。髪を頭の左右でお団子状にまとめた髪型が特徴的な彼女は、いわゆる超能力に強い興味をいだいており、とりわけ予知能力に関心がある。その理由はなんと月宮さん自身も予知夢を見ることがあるからだという。予知夢を見るのは決まって昼間で、その的中率はなんと100パーセント。彼女の予知夢は物語の中で重要な伏線となっているのも見過ごせないポイントだ。
そして、そんな彼女は、会長である上述の天川さんに密かに恋心をいだいており、肝心の天川さん本人はそのことに全く気がついていないというのも物語を面白くしている。
そして最後の3人目は、日野さんだ。長身でイケメン、しかもイケボという絵に描いたようなイケメンキャラな日野さんだが、この人もまた、しっかりと「変人」である。心霊現象に強い興味を持つ日野さんは、常にビデオカメラを片手に持ち歩き、日常のありとあらゆる場面を撮影しているのだ。もちろん霊をカメラにおさめるためである。
そんな日野さんだが、常識人としての側面もあり、暴走しがちな会長こと天川さんのストッパーとしての役割もある。
と、メインとなる登場人物の紹介は以上となるが、このようにどこぞのアドベンチャーゲームに登場してもおかしくはないくらいのキャラの立ちっぷりであり、好きな人はぶっ刺さること間違い無しキャラクター達である。
と、やや熱が入ってしまった感があるが、以上が登場人物の紹介とその魅力についてである。
交差する登場人物たちの思惑とオカルティックな要素
タイトルで本作のことをSFと書いていたがここで訂正しよう。本作はオカルティックミステリーである。
感想記事を書くにあたって改めて物語の内容を振り返ってみたが、本作はオカルトとミステリーが見事に融合しているのである。
最近アニメ化もされた漫画『ダンダダン』がオカルティック・アクション・ラブコメであるならば、本作はまさしくオカルティック・ミステリー・SFであるといえよう。この3つがごく自然な形で融合しているその手腕は本当に見事としか言いようがない。
おわりに
やや登場人物紹介に力が入りすぎてしまい、そこで力尽きてしまった感があるが、ともかく本作はキャラクター、ストーリーともに魅力的で非常に楽しめた作品であった。また本作は、続編を想定して作られているであろうことから物語からも見てとれた。もし続編があれば読んでみたいと思ったが、この1作で終わりというのも、それはそれで綺麗に終わっているので悪くはないとも思った。