みなさんは、和菓子と聞いてどんなイメージを持つでしょうか。
おじいちゃんおばあちゃんの家に行ったら置いてあるやつだったり、お茶と一緒に食べるものといったイメージでしょうか。
あるいは和菓子はあまり好きじゃないという人もいるかもしれません。
そんな和菓子ですが、ぶっちゃけケーキに代表される洋菓子と比べてどうです?
ずばり失礼を承知で言うなら、「じみ」じゃないですか?
今回紹介する小説『和菓子のアン』はなんと、そんな和菓子を題材にしたミステリーです。
え?なに?和菓子のミステリー?なんかじみだなぁ。和菓子より洋菓子の方がすき?
そんな方は、是非読んでみると和菓子にたいする見方がガラリと変わること間違いなしですよ。
※本記事では紹介にあたり、未読の方の楽しみを損なわないよう、ネタバレ等に関しては細心の注意を払っております。未読の方もご安心ください。
目次
あらすじ
本作の主人公の名前は、梅本杏子(うめもときょうこ)。18歳。
高校を卒業間近にむかえるも、まだ将来何をしたいのか、いまいち進路が決められずにいた。
そんな彼女に向かって、先生は言う。
「このままじゃ高卒のフリーターになるだけだぞ」
担任の先生はそれなりにいい人で、卒業するまで私のことを気にかけてくれていた。でも、大学に生きたいって思うほど勉強が好きじゃないし、いきなり就職っていうのもピンとこなかったんだからしょうがない。
引用:坂木司『和菓子のアン』(光文社文庫) p10〜11
そんな折、彼女は訪れたデパートの地下で、とある和菓子屋のアルバイト募集を見つける。
なんとその和菓子屋さんは、ひと癖もふた癖もある変人達の集まっているお店で…。
主人公は同僚達にふりまわされながらも、和菓子の世界の奥深さに魅了されていくのであった。
見どころ&感想
和菓子の世界の奥深さを知れる
とうとつですが、電気屋さんや携帯ショップの店員さん。この2つに共通するものはなんでしょうか。
求められるものと言い換えてもよいです。
いろいろありますが、まずあげられるのが、商品に関する詳しい知識だと思います。
お客さんに質問された時や、営業をかけるといった時に、電化製品や携帯プランについて詳しく知っておかなければ勤まりません。
この「商品に関する詳しい知識」が和菓子屋さんでも同じように必要だと言ったら、驚きますか?
一口に和菓子と言っても奥が深く、季節ごとにその季節にちなんだお菓子があり、お菓子の名前の由来や歴史的背景、さらには源氏物語などの文学作品の中にも登場するお菓子など、話題には事欠かないくらい盛り沢山です。
そんな、奥深い和菓子について、最初は右も左もわからない主人公と一緒に詳しくなっていくことができるのが面白いと感じました。
いや、和菓子って、こんなに奥深かったんか!と。
和菓子って普段は特に深く考えずに食べていたけど、そんな和菓子にたいする解像度がぐんっとあがりました。
和菓子職人も登場
みなさんは、和菓子職人をご存知でしょうか。
和菓子職人とは、読んて字のごとく和菓子をつくる職人さんのことです。
本作には和菓子職人も登場します。
恥ずかしながら、筆者は本書を読むまで、和菓子にも職人がいることを知りませんでした。
普段何気なく目にする、お菓子ですが、その裏側には開発や製作に情熱を燃やす職人さん達の存在があったのだなと。
考えてみれば、あたりまえの話ですが、本書のようなお仕事ものの作品は読むと、自分の知らなかった業界や世界を垣間見ることができるので視野が広がって面白いですよね。
魅力的なキャラクター
登場人物にひと癖もふた癖もあると先程書きましたが、そんな同僚達と主人公が繰り広げるドタバタ劇が楽しいです。
変人が登場する物語が好きな方、おすすめです。
見事な伏線回収と和菓子にまつわる謎解き
本作では、和菓子屋に訪れるお客さんの和菓子にまつわる謎が解かれていく様が描かれています。
それだけでも面白いのですが、さらに驚いたのが物語の中で少しずつ伏線が張り巡らせてあって、最後の話でそれが見事につながり、そういうことだったのか!という楽しみがあったことです。
こういった瞬間は、カタルシスを感じられてとても好きです。
終わりに
今回紹介した『和菓子のアン』は、著者の坂木司さんの作品の中で、個人的に特に好きな作品です。もし、興味をもたれた方がいましたら読んでみてはいかがでしょうか。